社会福祉法人 東京児童協会

Column

  • 東京児童協会の保育

子どもの未来をつくる保育とは? 東京児童協会が大切にする“4つの柱”~後編~

子どもの未来をつくる保育とは? 東京児童協会が大切にする“4つの柱”~後編~

保育園は単なる「子どもを預かる場所」ではなく、子どもたちの人生の基盤をつくる重要な教育機関です。
東京児童協会では「生きる力」「思いやり」「夢」そして「学びに向かう力」という4つの育みの柱を軸に、子どもたちの健やかな成長を支える保育を実践しています。今回は、東京児童協会の菊地元樹さんに、教育理念の成り立ちから、日々の保育現場での実践、そして未来への展望までを伺いました。保護者や保育者にとって、子どもの可能性を引き出すヒントが詰まったインタビュー、後編です。

「夢を育む」ための環境づくり

――4つの柱の中の“夢を育む”に関してですが、子どもたちが夢を持つためにどんな環境作りを意識されていますか?

「憧れの人」という存在は、感情を揺さぶられたり、行動を起こすきっかけになったりすると思っています。なので、やはり先生方には憧れられる存在でいてほしいです。そして、憧れの先生との信頼関係が、「やってみよう」という興味を持ち、先生の真似をすることにつながります。“真似をする”と“学ぶ”というのはセットなんです。それは、「夢を育む」第一歩にもなると考えています。

――憧れの先生になってもらうために、先生方に意識してもらっていることはありますか?

園では、エプロンとジャージは禁止しています。先生たちはTシャツを着用していますが、私服のときでも身だしなみは心がけてもらっています。そして、言葉遣いを丁寧に、話すときには必ず目を合わせます。これは、保育士としての必要なスキルとして、最初に教えられることでもあります。

――子どもに対しての言葉遣いも大事ですよね。

そうですね。否定語は使わないように、「走らないで」ではなく、「歩きましょう」。「ダメ」ではなく、「何々しましょう」と言うようにするとか。夢って、誰かが押し付けるものではなく、子どもが自分で好きを見つけることが大事だと考えます。園では、そのためのコーナー保育だったり、担任制をとっていないというのがあります。

――「コーナー保育」とはどういう保育でしょうか

コーナー保育とは、絵を描く、積み木で遊ぶ、絵本を読む、ままごとを行うなど、いくつかのテーマや活動に応じ「コーナー」分けを行う環境づくりです。子どもたちは自ら遊びを選ぶことで、存分に遊びに没頭することができます。

――コーナー保育も「夢を育む」につながるんですね。

子どもたちが選べるという点において、コーナー保育はとても理に適っています。子どもたちが選べる玩具を置いて、自分たちで遊ぶものを決める。遊ぶ仲間、遊ぶ時間を決められるような環境にすることで、「自分の好き」を見つけることができるんです。

――アートの探求やデジタル教材など、新しい手法を取り入れながら、「夢を育む」に対して東京児童協会が最先端でやっていることはありますか?

家庭と保育園では、子どもを取り巻く環境や役割に違いがあります。
保育園には、専門的な知見をもとに、子どもの発達段階に合わせたおもちゃや教材がたくさん用意されていますよね。
一方で、ご家庭ですべて同じようなものを揃えようとすると、時間や費用の面で負担が大きくなってしまいます。
だからこそ、保育園で大切にされている「発達に合わせた遊び」の考え方を、将来的にはデジタルの力も活用しながら、家庭でも自然に取り入れられる形にしていけたらと考えています。
デジタルを活用することで、保育園と家庭がそれぞれの役割を持ちながら、両輪となって、子どもたちの育ちをより高い水準で支えていく。
そんな環境づくりを目指して、これから取り組んでいきたいと思っています。

 「学びに向かう力」をどう育むか

――最後に、3年前にできた4本目の柱「学びに向かう力を育む」について教えてください。

「学びに向かう力を育む」ができたのは、20184月に施行された、小学校入学までに育んでほしい姿や能力の目安を示した「10の姿」がきっかけとなり、小学校への接続を意識した保育が求められるようになりました。「靴の着脱」「時計の読み方」といった基本的な行動が小学校生活で壁になることがあります。

保育園は、教育の部分が弱いということが前提になってしまっているので、私たちとしてはここを修正していかないといけない。保育園でも小学校にスムーズに移行できる力を育てる必要があると考えた結果、「学びに向かう力」を柱に加えました。

――具体的にはどのようなことをされているのでしょうか。

東京児童協会が作ったオリジナルの教材「ワンルーフゼミ」を使って、小学校生活に適応できるような学びや経験を積んでいます。集中して話を聞く、座って学ぶといった経験を通じて、小学校で困らない基礎力を育ててあげたいと考えています。また、子ども達には初めての体験、好奇心を持つキッカケがたくさんあります。それは、遊びの中や保育者との関わりの中で見つけることが多いです。それ以外にも興味関心のキッカケを、ゼミというツールを通して興味を持つ機会を届けられればと思っています。

将来に向けた展望と課題

――3本の柱が4本になり、今後それが増えていく可能性はありますか?

理事長も、「4本の柱は、時代と共に変化させていい」と話しています。私も時代とともに変化させてよいと考えています。生活環境や社会が求めることも変われば、子どもたちに必要な力も変わるからです。大切なのは時代に合わせて環境を作り続けることだと思います。

――子どもたちにとって、より良い環境を作るために、東京児童協会は常に進化し続けているのですね。

職員の質やノウハウ、マニュアルといったハード・ソフト両面の質の向上が課題です。また、職員確保や施設数の拡大も重要なテーマです。東京児童協会は業界のリーディングカンパニーとして、保育に関する情報発信を続け、日本の保育を牽引していきたいと考えています。

憧れの先生との出会いや、自分で選べる環境は、子どもたちが「好き」を見つけ、夢へと歩き出す大切なきっかけになります。さらに「学びに向かう力」を柱に据えることで、保育園から小学校への接続も丁寧に支えられます。時代に敏感に応えながら、環境と教育を進化させ続ける東京児童協会の取り組みは、子どもたちの未来を支える確かな基盤です。

前編はこちら

子どもの未来をつくる保育とは? 東京児童協会が大切にする“4つの柱”~前編~

一覧へ戻る