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東京児童協会コラム
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スポーツチャンバラが育む子どもの可能性 〜安全で楽しい新しい運動体験〜|葛西大きなおうち保育園

都内に24の保育園・こども園を運営している社会福祉法人 東京児童協会では、子どもたちに”本物の経験”をさせてあげたいという目的のため、一流のアスリートや元オリンピアン、世界大会出場選手などのトップアスリートの方の指導による「スポーツプロジェクト」を実施しています。
今回は、日本の文化、歴史、礼儀作法に関して、子どもたちが興味・関心を持つきっかけになればという思いを込めて、「葛西大きなおうち保育園」で「スポーツチャンバラ」体験会が開催されました。
「スポーツチャンバラ」と聞くと、チャンバラごっこのような遊びを思い浮かべる人も多いかもしれません。
けれど実際は、幼児から大人まで、誰もが安全に学び、心と体を育てられる“日本発祥の武道・格闘技系競技スポーツ”。
今回、長谷部先生・伊藤先生が指導する体験会で、子どもたちが何を学び、どんな変化を見せたのかをお届けします。
目次
教えてくれたのは、このお二人!

右)⻑谷部 洋祐 先生
2003年 全日本選手権 グランドチャンピオン(多種目総合優勝)
2005年 世界選手権 楯小太刀の部 優勝
2023年・2025年 全日本選手権 杖‧楯短刀・楯小太刀の部 優勝
左)伊藤 紀也 先生
公益社団法人日本スポーツチャンバラ協会・全国幼稚園スポーツチャンバラ普及委員会 委員長
身体的準備だけでなく、精神的な準備も重要

――スポーツチャンバラとは、どんなスポーツですか?
⻑谷部先生:「スポーツチャンバラ」は、その名の通りスポーツになったチャンバラです。空気で膨らませた「エアーソフト剣」(小太刀)と防具(面)を使用します。レクリエーションやスポーツ、いろんな楽しみ方がありますが、大前提として、安全、公平、自由っていうのを大事にしています。
伊藤先生:老若男女が学びながら競い合える“日本発祥の武道・格闘技系競技スポーツ”であり、安全で楽しい対戦型スポーツです。幼児期のお友達には、スポーツチャンバラで戦ってみようということではなく、護身術、身を守るものだというところからスタートしてもらいます。

ーー今日の体験会。最初から小太刀を持つのではなく、準備体操の時間が30分近くありました。準備体操はケガ防止にも大事なのでしょうか。
伊藤先生:幼児さんの中には運動慣れしていない子もいますし、初対面の私たちに慣れてもらうためにも、ウォーミングアップを兼ねてコミュニケーションを取っていく時間として長めに準備体操を行いました。
⻑谷部先生:身体的準備だけでなく、精神的な準備も重要なんです。それに、子どもたちの緊張をほぐすことで、指示したことが伝わりやすくなるんです。
ーーランニング後、マットの上での動物体操もみんな上手にできていましたね。
伊藤先生:楽しそうにしている子もいれば、動物体操の途中で涙ぐんでいる子もいました。「大丈夫?」と声をかけて、「できなくても良いけど、最初のお約束にあったように”諦めない”で頑張ってみよう」と伝えると、だんだん元気に体操をしてくれました。

⻑谷部先生:子どもたちの多くは、”戦う”ということを、マンガやゲームでは見てると思いますが、実際に自分がその場に立った時にどうなっちゃうのかなという視点は持ってないと思うんです。
伊藤先生:子どもは、すぐに試合をやりたがるんです。「あれ(小太刀)でやるんだよね! 戦うんだよね?」と。でも、いざやってみると体力がもたないんですよ。普段、人から打ってこられるという経験がないので、感情の起伏がものすごく現れるんです。感情的に「うわぁ!」っと驚いたり、「悔しい!」となると、実際の運動量の倍以上の感覚になるんです。
スポーツチャンバラを経験して得られること
ーーウォーミングアップもしっかりでしたが、説明もかなりしっかりされていた印象があったのはそのためだったんですね。
伊藤先生:今日は、戦いではなく、「護身術」を学ぶんだということをしっかり伝えます。これは、相手をやっつけるものではなく、まずは自分の身を守るものなんだっていうことを理解してもらうためです。

⻑谷部先生:子どもたちが今日の体験によって得られることの中で何より大きいのは、礼儀の部分かなと思います。相手を倒すことが目的ではなく、自分を守る術を知ること。そして何より、“相手を思いやる心”を育てるのが目的です。

伊藤先生:大人は説明すると理解できますが、子どもは、「これ、大事だからね」と言葉だけに頼って説明してもわからないです。負けて泣いちゃう子には、「それは悔しいって気持ちなんだよ」ということを言葉ではなく、リアルな体験、練習を通して、教えてあげられる。これは、やっぱり体験がないと学べないことなんです。そうした体験をして、自分を客観的に眺めるようになるんです。「なんで負けちゃったのかな」とか、「じゃあ、次どうしたら勝てるかな?」ということを、自分で振り返って考えるといった経験が、本当の意味で、子どもたちの生きる力を育むのだと思います。

⻑谷部先生:相手と対峙して何かするというのは、当然、戦いみたいになりますが、その体験が自分を見直すということにつながると思います。自分の実力を正確に捉えて、“今の自分には何ができるのか”を考えるきっかけになると思います。
挨拶もしっかりとできていて、すごい!

ーーウォーミングアップも含めると、1時間以上の体験時間となりましたが、最後まで子どもたちの集中力が途切れることがなかったのもすごいなと感じました。実際、子ども達に教えてみてどうでしたか?
伊藤先生:非常にしっかり話を聞けていて、教えていることを見るだけでちゃんとできるのですごいなと思いました。あと、自分たちで声をかけ合ったりもしていたんですよね。ちょっと工夫をするとか。長谷部先生に挑戦したときも、2回戦目には作戦を変えるなど、子どもたちの中に「考える力」「協力する力」が芽生えているのが見えました。

⻑谷部先生:体験不足が深刻な現代の子どもたちにとって、スポーツチャンバラは貴重な身体的・精神的経験になります。瞬間的な判断力や、コミュニケーション能力を育むきっかけにもなるので、1人でも多くのお子さんに、スポーツチャンバラを体験する機会を持っていただけると良いなと思います。

「戦う」よりも「守る」ことを通じて、礼儀や思いやり、そして自分を見つめる力を育てる。
スポーツチャンバラは、まさに“体で学ぶ教育”でした。
汗を流しながら一生懸命に挑戦する子どもたちの姿は、とても頼もしかったです!

