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東京児童協会コラム
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「紙からはじまる、まちとのつながり」——アトリエ宵湖舎さんと子どもたちの交流レポート|ひらがなのツリーほいくえん

東京都内に24の保育園・こども園を運営する社会福祉法人 東京児童協会では、地域に根差した園づくりを大切にしています。
東京スカイツリーのふもとにある「ひらがなのツリーほいくえん」は、園内に46色のカラフルなひらがなが吊ってある、創造性あふれる保育園です。今回、園のご近所にあるアトリエ「宵湖舎(Yoikosha)」さんとの出会いをきっかけに、あたたかな交流が生まれました。その様子をレポートします。
はじまりは、一本のメールから
ある日、「ひらがなのツリーほいくえん」宛にこんなメールが届きました。
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墨田区業平にございます宵湖舎(Yoikosha)と申します。業平公園前にshopがございます。
この度事情により、7月で閉店することになりましたが、印刷の残紙がたくさんありまして、もし保育のお役に立てるようでしたら、ぜひ活用して頂けませんか?近所ですので、見に来てくださっても構いません。
ご検討いただけましたら幸いです。
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メールの送り主は、園から徒歩2分ほどの場所にあるアトリエ「宵湖舎」さん。点字用紙を使ったエコクラフトなど、紙素材を活かした作品を制作されている野本イクエさんが主宰しています。イクエさんは、地元タウン誌『Avenue』で長年イラスト漫画を連載されるなど、イラストレーターとしても活躍されています。
さっそく園長とともにアトリエを訪問すると、「子どもたちに使ってもらえるなら」と、様々な種類の残紙を快く譲っていただけることに。制作好きな子が多い「ひらがなのツリーほいくえん」にとって、まさにぴったりの贈り物です。
園長の仁和先生は「子どもたち、絶対に喜びます!」と嬉しそうに語り、紙の活用に想いを膨らませていました。
イクエさんが作る作品は多岐にわたり、美しい模様の壁面作品から非常に精巧な立体作品までいろいろ。
「こんなに素敵な作品を、ぜひ子どもたちに見せてあげたい!」と園長より園児との来訪をお願いしたところ、快諾してくれたイクエさん。
次は子どもたちと伺うことをお約束してアトリエを後にしました。
点字用紙でつくるアート
イクエさんのペーパーワークのなかで特に特長的なのが点字用紙の端紙を巻いて作るオリジナル「まきまきエコクラフト」(マージナルアートMARGINAL ART🄬)
点字用紙というのは用紙の端に綴じるための部分が存在するのだそう。不要な場合はそこが端紙となります。それをくるくる巻いて「これが端紙で!?」と思えるような素敵な作品を作ってらっしゃいます。
子ども向けに「まきまきエコクラフト」の工作キットも作っておられ、今回残紙と共に、この工作キットもプレゼントしてくださいました。今回、このキットを使用し園での活動が実現しました。
子どもたちもエコクラフトに挑戦
この日、年長クラスのつき組と年中クラスのほし組のみんなが挑戦したのは「まきまきエコクラフト」の「まきまきテントウムシ」
くるくると巻かれた点字用紙の端紙でテントウムシを作ります。
最初の工程でモールの足をつけると、途端にテントウムシのような出で立ちに。モールの先を少しだけ曲げて「見て!こうすると立つよ!」と器用に工夫する子も。さすが、制作好きな「ひらがなのツリーほいくえん」の子どもたちです。そのあとは背中の色を塗っていきます。見本に忠実に赤く塗る子、自分の好きな色を思い切り塗る子、沢山の色を塗ってその重なりを楽しむ子、各々が好きな色を塗ることで制作の楽しみを味わいます。
きっとイクエさんも、こんな「ものづくりの楽しさ」を園児に届けてほしいと思ってくださったのだと思います。
「ありがとう」を伝えに、アトリエ訪問へ!
最後にシールでおめかしすると、各々のテントウムシが完成!
これで終わりかと思った子どもたちに、先生が「今日はこれをプレゼントしてくれた『よいこしゃ』さんに、見せに行くよ!」と伝えると
「今から!?」「これから行くのー!??」と目をキラキラさせてくれました。
到着すると、イクエさんが笑顔で出迎えてくださいました。自然とみんなで輪になって作品を見せながら「この色を見て!」「名前をつけたんだよ!」などと話す子どもたちの姿に、イクエさんも「とっても素敵!」と感動されていました。
その後は、イクエさんの作品をじっくり鑑賞。「どうやって作るの?」「どれくらいかかるの?」と次々に質問が飛び出し、自分たちの作った作品と同じ素材から、大きなアートが生まれていることに驚きの声が上がっていました。
「もっと作ってみたい!」の声が上がり、最後に追加の点字用紙をお土産にいただきました。沢山の御礼と「また出来上がったら見せに来るね!」の言葉を届けてアトリエから園へ帰ります。
地域とのつながりが、子どもたちに伝えるもの
私たち東京児童協会が大切にしていることの一つが、「地域との関わり」です。子どもたちには、自分たちが地域の中で生きていること、多くの人々に囲まれて生活していること、そしてその温かさを感じてもらいたいと思っています。
今回の宵湖舎さんとの交流は、その思いを体現するものでした。「あそこに行けばイクエさんがいる」「あんな素敵なものづくりをしている人がいる」と知ることで、子どもたちの心には安心感と温かさが育まれます。
私たちが園内の保育の中だけでは伝えられないことを、今回宵湖舎さんとの繋がりで子どもたちに伝える機会となりました。
宵湖舎さんは一旦閉店となるそうですが、イクエさんの創作活動はこれからも続いていくとのこと。子どもたちの成長を見守る地域の存在として、これからも関わっていただけたら嬉しく思います。
そして、今回このような素敵な贈り物をたくさんいただいたことに、改めて心より感謝申し上げます。
宵湖舎(Instagramアカウント)https://www.instagram.com/yoikosha
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