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東京児童協会コラム
- デジタルコンテンツ
保育の現場からより効果的なコンテンツを制作|東京児童協会デジタルコンテンツ部・前編

東京都内に24の認可保育園と認定こども園を運営する社会福祉法人 東京児童協会は、少子化が進む中‟選ばれる保育園”になるために、保育園の運営、活動だけではなく、保育園施設の中にもさまざまな工夫をしています。
そのひとつとなるのがデジタルコンテンツ。法人の中には、企画、マネジメント、制作を担当するデジタルコンテンツ部があります。
「24施設もの保育の現場を持ち、実際に子どもたちと接し、子どもをとりまく環境の変化をつぶさに見ている我々にしか作れないデジタルコンテンツがあります」。
今回は、デジタルコンテンツ部のみなさんにお話しを聞きました。
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保育の現場で制作するデジタルコンテンツを紹介|東京児童協会デジタルコンテンツ部・後編
子どもたちの発達に合わせた遊びにデジタルの力を
――デジタルコンテンツ部というのは、何をする部署ですか?
東京児童協会が運営する各園で使用するプロジェクションマッピングなどのコンテンツを企画、マネジメント、制作している部署です。子どもは年齢に応じた発達があり、各年齢で鍛えるべき機能も違います。我々は、子どもたちの発達に合わせた遊びにデジタルの力を活用したいと考え、さらにきめ細やかなコンテンツを作るため、法人の中にデジタルコンテンツ部を作りました。
――保育園事業の中に、デジタルコンテンツの専門部署を置くというのは珍しいですよね。
そうですね。一般的には、このようなコンテンツはアート系の方たちが作っていることが多いと思います。ただ、私たちは24もの現場を持ち、実際に子どもたちと接することができます。また、子どもをとりまく環境の変化もつぶさに見ています。このような保育の現場や発達に精通した我々だからこそ、作れるコンテンツがあると思っています。
――デジタルコンテンツを積極的に導入している理由は?
デジタルやweb環境が整っていなかった我々世代にとって、興味関心・好奇心を持つキッカケづくりは、図鑑や絵本などから得る知識や実体験で感じたことが中心でした。今の子どもたちは、それにデジタルが加わりキッカケづくりのツールが1つ増えたと思っています。デジタルネイティブな社会になったからこそ、既存の体験だけでなく、現代社会において体験する事象を幼少期に提供してくことも大事なことではないかなと思っています。デジタル環境をどのように子育てに導入していくべきなのということについて様々な議論がされていますが、我々の中でもその正解はまだ出ていません。今後もその課題と向き合いながら進めていきたいと思っています。
各園のテーマに合わせたコンテンツ展開
――デジタルコンテンツ部が作っているコンテンツについて教えて下さい。
私たちが開発しているデジタルコンテンツには、大きく二つの開発目的があります。一つ目は、施設設備の一部としてデジタルコンテンツが活用されるもの。二つ目は、知育コンテンツしてデジタルコンテンツを活用したものです。知育コンテンツは現在開発中のものも含めて、『さわって遊べる!きせつのえほん』、『文字コンテンツ「あ~わ」』『ONEderlandプロジェクト』『InteractiveOcean』などがあります。
2024年11月からスタートした『さわって遊べる!きせつのえほん』は、壁一面にLEDパネル設置し、その月に合わせたテーマでタッチコンテンツを作っています。11月はイモ掘り、12月はクリスマスといった感じです。まだスタートから半年ですが、今後毎月のコンテンツが揃った後は、細かなイベントものも制作予定です。
『文字コンテンツ「あ~わ」』は、文字や言葉に親しむ機会を増やし、子どもたちの語彙力と読解力を育むことを目指した学習コンテンツです。基本的には、ディスプレイにさわって反応があるコンテンツを作っています。
――全ての園で体験できるのですか?
施設系のコンテンツでは、2020年4月に開園した「EDO日本橋保育園」、2022年4月に開園した「かさい発みらい行きほいくえん」、2023年4月に開園した「昭和こども園」、「学び処世田谷保育屋敷わびさびあそび」にそれぞれの保育園の環境にあわせて、プロジェクションマッピング、大型LEDビジョンなどが設置されています。どのコンテンツも触れたり動いたりすることで、コンテンツが反応するインタラクティブなものになっています。
――園によって、コンテンツの内容が変わることもあるのですか?
あります。東京児童協会の保育園は、地域の文化や歴史に合わせて園舎のデザインがされているので、施設系のデジタルコンテツも各園ごとに異なります。
「昭和こども園」では、壁面のインタラクティブウォールが曜日ごとに世界が移り変わる仕組みを導入しています。月曜日はお花の世界。火曜日は化石の世界といった感じ。 また、エントランスのLEDビジョンでは常に、幸福を運ぶとされるツバメが園児たちの登園を出迎えています。
「学び処世田谷保育屋敷わびさびあそび」は、世田谷城址の横に施設があるので、武家屋敷風のテーマ。子どもたちが楽しみながら季節や歴史を学べるよう、音と映像をメインにした2つのコンテンツがあります。廊下を行き来する子どもたちの歩みに呼応して、さまざまな音色が奏でられる音のコンテンツと、入り口のアプローチに設置した、人の動きに応じて映像と音のコンテンツです。
「かさい発みらい行きほいくえん」は地域に「親水」というテーマがあります。ですので、最初に導入したコンテンツもタッチセンサー式の「海」をテーマにしたコンテンツでした。
全ての子どもたちが平等に高水準の保育を
――デジタルコンテンツを作る中で気をつけていることはなんですか?
LEDビジョンが壁一面と大きいので、子どもたちの身長に合わせてさわれる部分を下半分に作っています。上のほうにさわれる部分をおいても届かないので、子どもの手の届く範囲にするということは意識しています。
――さわれるコンテンツ、子ども達の反応はどうですか?
水の中の世界が広がり、カラフルな水中植物がゆれたり、赤や青の魚、カメが泳ぐというコンテンツがあるのですが、子どもたちは指を差したり、手で触れたり楽しそうにしていたと聞いています。また、節分のものは、子どもたちがはしゃいで大変だという報告を先生方から受けました。私のほうでは、子どもたちがさわるとシステムが光るので、「今、さわっているなぁ」ということがわかります。
――エントランスにデジタルコンテンツを導入している園では、実際にどんな影響や反応がありますか?
送迎時、親と離れることでぐずるお子さんもいます。そういう子たちにとって、登園が楽しくなるような工夫ができればと思っているのですが、実際どのくらいの影響があるのかは、今後調査していきたいと思っています。
――東京児童協会にとって、デジタルコンテンツ部はどのような存在?
法人には、全ての子どもたちが平等に高水準の保育を受けられるようにしたいという理念があります。その中でデジタルコンテンツは有効活用できると考えています。我々は、デジタルコンテンツを通した体験機会を子どもたちにどのように展開するべきかを常に保育士と共に検証をしています。
そういった検証もコンテンツを持っているからこそできることです。
私たちは保育現場の視点から「デジタルコンテンツを通して子どもたちが関心を持つこと、提供できる体験とは何か?」を考え、コンテンツを制作と検証を行っています。
子どもたちの興味関心を見つけ出す効果的なツールはこれからも色々と出てくると思います。私たちはこれまでの保育実践を基盤としながら、新しいツールの効果的な活用方法を常に検証し、必要に応じて子どもたちに届けて行くことも大切なことだと考えています。
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