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江戸川区葛西大きなおうち保育園 河野園長の園やスタッフ・子どもたちへの思い

江戸川区葛西大きなおうち保育園 河野園長の園やスタッフ・子どもたちへの思い

葛西大きなおうち保育園・園長として日々子どもの成長を見守る河野先生。園長という立場から見る、スタッフと子どもたちの関わり方や、保育現場で大切にしていることなどを伺いました。

河野園長先生 2000年、東京児童協会に入社。2021年に江戸川区「葛西大きなおうち保育園」園長に就任。

保育園ではどんな人たちが働いている?

「主任、副園長、園長、清掃スタッフ、調理スタッフ、調理補助スタッフ、栄養士、看護師、保育士、保育補助スタッフなど、多くのスタッフが働いています」

「保育園は保育士を希望する学生さんも多いんです。専門学生が4人と、大学生のスタッフも数人います」

園では、専門分野ごとにさまざまなスタッフが働いていているなかで、それぞれが子どもたちと関わりを持っています。

園スタッフと子どもたちとの関わり方

「たくさんのスタッフがいますが、あえて園の中で『職種』を分けたくないと思っているんです。保育士や看護師、栄養士など、さまざまな専門スタッフが関わっていますが、大事なのは、ここで働くスタッフは全員「子どもに関わる大人」として、同じ立場だということ。それこそ子どもたちにとっては、同じ「大人」ですよね」

「だからこそ、職種分けは必要ないと思っていて、実際、よく職員にも伝えています。そもそも子どもは、大人を見て育ちます。関わる時間が長いのは保育士ですが、例えば食事やケガをした場合などは、当然専門スタッフに頼ることになります。」

「そうやって日々、園生活を送るうちに、子どもたち自身がどんなときにどんな人が関わるのか……を自身の「体験」から徐々に理解しています」

「職種の垣根なく、子どもたちと密に関わっているからこそ、園にはいろんな大人がいることを子どもながらに感じ取っているんだと思います」

保育で大切にしていること

「面白いと感じているのは、保育士のキャラクターが子どもたちにも影響している部分があるということ。それでいうと、私の周りには、いつの間にかなぜかキャラの濃い子どもたちが集まるみたいで……。私が個性的だという自覚はないんですけどね(笑)」

「立場上は園長ですが、根本は保育という仕事を楽しみたいと常々思っています。私に限らず、職員が楽しんでいれば、子どもたちは自然とそういった雰囲気を感じとってくれます。逆もしかりで、子どもたちが楽しんでいれば、職員も当然うれしいし、楽しいですよね。そんな環境であり続けたいですね。」

「これは実際にあった話ですが、子どもたちがどらやきを作りたいと言い出したことがあったんです。それに対して職員が賛同して、さらにどらやきの原料はなにかという議論になったんですね。その結果、近所の和菓子屋さんに訪問することになりました。もちろんお世話になるお店には事前に根回しはしましたけど(笑)」

「これは一例ですが、こうした日常でふっと湧いて出る子どもたちの興味・関心事は、できる限りサポートしたいですよね。それが今回のように→当法人が大事にしている食育につながることもありますし」

「また、子どもたちはもちろんですが、職員もそういったことを楽しいと感じてもらえたらうれしいですよね」

「大人たちだけではとぎれがちな地域とのつながりも、いい意味で子どもたちを巻き込めば、より地域の人たちとのつながりができますよね。だからこそ、こうしたきっかけ作りは大事にしていきたいです」

この件をきっかけに、和菓子屋さんとのつながりができたそう。子どもたちの日常にたくさんある興味関心事をしっかりキャッチして、自然に展開できるのは、しっかり子どもたちを見ているからこそ。それが地域とのつながりをより深めていくことにつながることにも。

また、子どもの自己肯定感を高めていきたいと日々考えている河野先生。日常の保育環境のなかで子どもが発信するさまざまなサインを見逃さず、しっかりフォローしたり、褒めたりなど、大人の何気ない声がけが大切だといいます。つまりは、それが自己肯定感を養うきっかになるのだと。

職員の保育観

「園としては、全員同じ思いや方向性を理解したうえで、よりよい園作りをしたいと願っています。ですが、保育は正解がないって言われるほど、細かい部分で一人ひとりの保育観は十人十色です。」

「当法人の特徴として異年齢児保育を行っています。一斉保育やクラス単位での保育を行ってきた職員が転職した際は、最初は戸惑うことが多いかもしれません。ですが、頭ごなしに違いを指摘するのではなく、伝え方には気をつけています」

「言い方次第では、自分の保育観を否定されたと感じてしまったりするからです。なので、なるべく噛み砕いて、園としての理念を理解してもらえるように心がけています」

「じつは、私自身が主任だったときに苦労した部分でもあるんです。私の言動で反発心を生んでしまわないように、園内研修をしたり、園で使っているマニュアル本を進めてみたり、保育現場に一緒に入って目の前で見てもらったりしていました」

「ただ、園長という立場だと、主任時代にやっていたことと同様のことをしても、それがトップダウンとして受け止められがちですよね。なので、保育の現場に入ることもありますが、なるべくまかせる部分は口出ししないようにしています」

「また、保育士たちは様々な背景・キャリアを経験してこの園に集っています。同じように伝えても、背景や経験値が違えば捉え方が違ったりしますよね。ただ、一緒に働いているスタッフたちは、ご縁があって今同じ場所で働いているので、やはりチームとして、子どもたちのために保育環境を一緒に良くしていきたいという思いは共有し続けていきたいです」

一人ひとり保育観が異なるため、同じ思いを共有する難しさを感じている現実はありますが、個人を尊重しながらも、チームとして同じ志を持てるよう、日々奮闘しています。

新人保育士との関わり方

「私自身が実際に入社当初そうだったように、自信がなかったり、失敗を恐れて前に進めなかったりするスタッフもいます。その場合は、小さな成功体験を積み重ねていけるように指導しているつもりです。それが結果的に、自分の経験からも、本人の自信につながると感じています」

河野先生の場合は、いろいろと任せてもらえることが多くなった5年目くらいから少しづつ自信がもてるようになったといいます。保育士としての経験が、全体を統括する園長になったいま、役立っていると言えそうですね。

「子どもの笑顔を見るとこちらもうれしいですよね」と、にこやかに笑う河野先生は、入社当初から変わらず「保育」を楽しみたいと語ります。だからこそ、保育現場を陰ながら見守ったり、スタッフの教育などにも気を配ったりなど、現場のより良い雰囲気作りに尽力されています。