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東京児童協会コラム
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保育園の食育活動―芋掘り遠足で学ぶ“食べること”の大切さ|葛西大きなおうち保育園・江東区南砂さくら保育園

東京児童協会の運営園では、食育活動の一環として秋に「芋掘り遠足」を実施している園があります。
今回は、江戸川区の「葛西大きなおうち保育園」と江東区の「江東区南砂さくら保育園」——2つの園が合同で行った芋掘り遠足の様子をレポートします。
おやさい探検からスタート
訪れたのは我孫子市にある「ベジLIFE!!」さんの農園。さつまいもだけでなく、さまざまな野菜を育てています。
当日はさつまいも畑へ行く前に、まず“おやさい探検”からスタート。「この野菜は何でしょう?」「どこにできると思う?」と、クイズ形式で子どもたちに問いかけながら野菜のことを教えてくれました。

「落花生はどこにできるでしょう?①葉の下 ②土の中 ③実の中……さあどれだと思う!?」
元気な声が響いたあと、「じゃあ、正解を見に行こう!」と実際に落花生の畑へ。畑の土は公園などの整備された地面とは違ってふわふわ。そんな土の上を歩くのは初めての子も多く、「転ばないようにね」と声をかけられながら、恐る恐る足元を確かめる姿が印象的でした。
実際に土の中から出てきた落花生を見て、「こんなところにできてるんだ!」と驚きの声。野菜が“土の中で生きている”という実感が、子どもたちの中にしっかりと刻まれたようです。
いよいよさつまいも畑へ
そしていよいよ、今日のメインイベント・さつまいも掘りへ。軍手をつけて、子どもたちの表情も真剣そのもの。
ベジLIFE!!の香取さんから掘り方を教えてもらいます。
「手で土を掘って、おいもを探して、最後に抜くんだよ。おいもは抜くまでどんな風に育っているかわからない。抜いてみて初めて“地球の中こんにちは”って感じだね」

何度も繰り返し伝えられたのは「ここにはお野菜が埋まっているから、踏んではだめだよ。お野菜を大切にしようね」という言葉。実際に野菜を育てる人の声だからこそ、子どもたちの心にしっかりと届きます。
さあ、自分たちで掘ります
最初はおそるおそるだった子どもたちも、ひとつおいもを見つけると「見て!あった!」と大喜び。夢中で掘り進める姿は、まるで探検家のようです。

掘りあげたおいもは子どもの顔より大きいものもあり、「せんせい!見て!」と笑顔で見せてくれました。収穫したおいもの中からおうちへのお土産と園に持ち帰る分を選びました。園に持ち帰る分は「スイートポテトにしたい!」と子どもたちが自分たちで相談して決めたそうです。

子どもたちにより良い体験を届けるために
【野菜を“好きになるきっかけ”をつくる】
今回子どもたちを受け入れてくださいましたベジLIFE!!の香取さんにお話を伺いました。
——今日はおそろいの服で参加して、子どもたちもとても楽しそうでしたね。
そうですね。みんな元気いっぱいでした。多分、ほとんどの子がこういう体験は初めてだと思うんです。だからこそ、この機会をきっかけに野菜や農業に興味を持ってもらえたらいいなと思って活動しています。
——香取さんが「お野菜を踏まないようにね」「大切にしようね」と声をかけていたのも印象的でした。子どもたちへの声かけで意識されていることはありますか?
小学生くらいになったら「自分の体は食べたものでできているんだよ」と伝えるようにしていますが、保育園の子たちにはまず“自分で掘った野菜を食べる”ことが大事ですね。きっと自分で収穫したものなら、嫌がらずに食べられると思うんです。野菜嫌いの子が多いと思いますが、そこから野菜嫌いが減ってくれたらうれしいです。
——農業体験は一般の方にも開かれていると伺いました。
はい。10年前に活動を始めたときから「農業を憧れの職業に」という目標を掲げているんです。この思いを達成するまでは農業をやめないつもりでいます。最近では、食料自給や環境の問題などをニュースで見る機会も増えました。だからこそ、小さいうちから“農業は楽しい”という感覚を持ってもらうことが大切だと思っています。更には職業選択のタイミングで農業が選択肢に挙がればと思って活動しています。
——子どもたちに実際に農家として働く大人の姿を見てもらえたのも大きな学びだったと思います
そうですね。小学校の高学年でキャリア教育の授業に呼ばれることもあって、そのときは「日本一夢を叶える農家」というタイトルで話をしています。僕は「ポニーを見ながらログハウスに住みたい」という夢があり、農家をはじめてからその夢を叶えました。そうやって“夢を実現できる農業”を伝えていきたいですね。
【想像が学びに変わる——保育士さんたちの工夫】
また今回引率してくれた「葛西大きなおうち保育園」と「江東区南砂さくら保育園」の担任の先生方にもお話を伺いました。

——今日の芋掘り遠足の前に、子どもたちにはどんなことをお話していたんですか?
当日に向けて気持ちを高めていきたいので、事前にさつまいもが出てくる絵本を読み聞かせるなどしました。また、誕生会では毎回先生たちが劇をするのですが、10月の誕生会では「大きなかぶ」をアレンジした「大きなさつまいも」を披露しました(笑)
——子どもたちの気持ちを当日に向けて作っていくのが大切なんですね
そうなんです。いきなり「お芋を掘りに行くよ!」と言っても、子どもたちは「?」となってしまいます。
だからこそ、当日に向けて少しずつ気持ちを作っていくのが保育士の大切な役割です。
「お芋は土の中で育つんだよ」など、絵本を見ながら話すと、子どもたちは頭の中でイメージを膨らませます。そのイメージを、実際に目の前で体験する——それが学ぶ喜びになるんです。私たちは、子どもたちがどんな想像を描けるかを大切にしながら、丁寧に準備を進めています。
——園に持ち帰ったさつまいもで、後日スイートポテトを作るんですよね?
はい。実は子どもたち自身が「スイートポテトにしたい!」と相談して決めてくれたんです。
自分たちで収穫したさつまいもを、栄養士さんたちが大切に調理してくれて、美味しい料理に変わっていく。
その一連の流れを体験できることが、子どもたちにとって大きな喜びになると思います。
「食べること」や「作ること」の楽しさ、そして感謝の気持ちを感じてもらえたら。「食」の一連の喜びを、実体験を通して感じてくれたら嬉しいです。
“食べること”が学びになる日

畑での体験を通して、子どもたちは「食べること」「収穫すること」さらには「働くこと」の意味を少しずつ感じ取ったようです。
土の感触、野菜の香り、そして笑顔で交わされた言葉の一つひとつが、子どもたちの心に小さな“学びの種”をまいた一日になりました。
「ベジLIFE!!」公式サイト https://vegelife.org/
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