Column
東京児童協会コラム
- とうきょうすくわくプログラム
子どもの豊かな心の育ちをサポートする「とうきょう すくわくプログラム」に参加│実践発表会

東京都内に24の認可保育園と認定こども園を運営する社会福祉法人 東京児童協会は、「とうきょう すくわくプログラム」に参加しました。
「すくわくプログラム」は、すべての乳幼児の「伸びる・育つ(すくすく)」と「好奇心・探究心(わくわく)」を応援し、主体的・協働的な探究活動を通じて子どもの豊かな心の育ちをサポートする幼保共通のプログラムです。
東京児童協会が定めたテーマは、「相撲」。日本伝統文化である相撲を子どもたちに親しんでもらいながら、礼儀や好奇心の育みを目的としました。
「相撲」というテーマをもとに、24園がそれぞれに園としての取り組みテーマを決め、今回の「すくわくプログラム」に取り組みました。
すくわくプログラムへの参加
東京児童協会は「すくわくプログラム」の参加に際し、保育士たちが学びの機会が保育に生かし、保育の質を高めていくという目的を設定しました。
さらに、このプログラムへの参加は、コロナ禍で休止になっていた相撲大会を7年ぶりに各園での相撲大会を復活させるきっかけにもなりました。
「すくわくプログラム」のテーマを「相撲」に決めたこと、今回の「すくわくプログラム」への取り組みについて思うことを、台東区立たいとうこども園の小川先生に聞きました。
「最初は、先生方から「相撲って……」という反応もありました。今は、相撲大会をやっていた時代を知らないスタッフも多いですし、全体で大会をするのは大変なことです。「相撲のルールは守りながら、それ以外は自由にやってみる?」と提案してみたら、想像以上にうまくできたなという印象です。やってみたら、先生たちから、「もっとやってあげたい」「こうしてみよう」という気落ちが出てきたようで、楽しかったと思います。
最初はぶつかられて泣いていた子が最後には強くなっていたり、運動はいやだけど紙相撲は好きという子がいたり、絵を描くことは好きという子がいたり……。本当にいろいろな形で子どもたちが相撲に興味を持ってくれました。
長いスパンで子どもたちの「相撲ってなに?」「がんばりたい」「もっとこうしてみたい」という気持ちの変化や成長を見られたことが、このプロジェクトのおもしろかったポイントかなと思っています」
両国国技館での相撲見学
普段の保育ではなかなか体験できないようなことも、「すくわくプログラム」に参加したことで実現することができました。
そのひとつが、両国国技館での相撲観戦です。遠足とは違った行事。みんなで行った相撲観戦は、子どもたちにとって忘れられない体験となったことでしょう。
実際に相撲部屋を訪れ、練習風景を見学させてもらった園もあります。保育園の立地的に、相撲部屋が近い園は、普段のお散歩時間にも相撲部屋を通ることはありました。しかし、今回のプログラムにより、子どもたちが相撲への関心を深めたことで、これまでとは違った意識で相撲部屋の前を通るようになったようです。
写真は台東区の「立浪部屋」に見学に行った様子
子どもたちの相撲体験
「すくわくプログラム」参加に際し、各園でも独自のテーマを設定しました。その中のいくつかの園のテーマをご紹介します。
「相撲を知り興味・関心を高めていく」(EDO日本橋保育園)
「相撲って楽しいかも」(忍岡こども園)
「相撲遊びを通しての心の変化」(亀戸こころ保育園)
「ちゃんこ鍋製作~力士の強さの秘密~」(葛西大きな保育園)
このテーマに沿って、それぞれの園でさまざまな取り組みをしました。
さらに、共通して開催されたのが本物のお相撲さんに会えるという企画も実施され、シコの踏み方や股割りを直接お相撲さんから教えてもらえる時間を持ちました。
実際に見るお相撲さんの大きさに子どもたちは大興奮!
「お相撲さんを間近で見るという経験は、子どもたちにとってすごく大きかったと思います。みんな、息をのんで見ていました。こういったリアルな体験はとても貴重ですし、子どもたちも日頃ない行事が増えるとうれしいんですよね。お相撲さんが園に来てくれたことや、相撲部屋見学、両国国技館での相撲観戦は、「すくわくプログラム」の”子どもの興味、関心、探求のため”というテーマに対して、有効的に実施できたと思います」(小川先生)
いくつかの園で集まり、合同相撲大会として7年ぶりに復活した相撲大会も大盛り上がり!
子どもたちは、自分たちで四股名を考え、横綱を目指して頑張りました。先生方が用意した化粧まわしを身につけ、鼻高々な顔をした子どもたちはとても良い表情をしていました。
24園の先生たちによる実践発表会
テーマ:「相撲」 日本伝統文化であること。礼儀や好奇心を育む。 コロナ禍で中断していた相撲大会復活させる機会に。
3ヵ月に渡る「すくわくプログラム」の締めくくりは、24園の先生方による「実践発表会」です。この発表会では、保育の探究活動の基本になっている5つのプロセスを活用しています。
①テーマを決める →「相撲」
②問いを考える →子どものなぜ、どうしての問いを一緒に考えるプロセスを大事にしたい
③環境デザインをする →どんな環境だと興味・関心を深められるのか
④研究活動を実践・記録する →保育そのもの 子どもの目線になって考える 子どもと一緒に見ていく。まとめるスキル 発表するスキルを培っていく
⑤振り返り・共有する →複数の視点で振り返ることが大事。共有機会を実践発表会と位置つける。保護者への共有もおこなう
この5つのプロセスを日常の保育の中でも意識して実施することにより子どもの成長、保育者の成長、学びにつなげます。
1園の発表持ち時間は、5分。24園あるので、発表だけでも2時間以上の実践発表を、全ての園の先生方がオンラインで参加して聞きます。
他園の発表を聞くことで、自園のテーマとは違う点や、子どもたちに見られた変化など、多くの情報をもとに、今度の保育に生かせる内容が充実していました。
全ての発表の後、すみだ川のほとりに笑顔咲くほいくえんの菊地園長が発表会の感想を述べていました。(所属園は25年3月現在)
「今年度は、東京都のすくわくプログラムと並行しての発表会となりました。共通のテーマがありながらも、各園独自の視点を見出し、どのように子どもたちの興味関心を引き出すかということはたやすくなかったと思います。子どもたちが主体的に関わりながら相撲という伝統文化を通じて、興味関心は多岐に渡り多くの学びを得たことがよく伝わってきました。悔しい、勝ちたいという気持ちの芽生えや、どうしたら強くなれるのかという疑問や探求が子どもたちを大きく成長させる原動力になったことが感じられました。相撲という一つの伝統文化が子どもたちの心をこんなにも揺さぶり成長へと導くとは想像しておりませんでしたし、子どもが持つ無限の可能性を見ることができました。
各園が相撲という共通のテーマを持ちながら、環境や保育者の関わりによって、それぞれの実践が生まれました。そして、その全てが”大きなお家”の理念に通じ、東京児童協会の教育方針に沿ったかけがえのない実践となりました。」
「1つの発表で終わるのではなく、次の保育につなげることが私たちの大切なステップです。
その1歩からはじまる新たな実践を繰り返すことが私たちの学びとなり、子どもたちの遊びを通じた学びをより深いものにする。それが確かな基盤となり、子どもたちの探究活動の可能性を広げる力になると思います」
今回の「すくわくプログラム」で、「相撲」をテーマに過ごした時間は、東京児童協会の保育者、子どもたちにとって忘れられない時間となりました。