社会福祉法人 東京児童協会

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保育学生サークルを支援する、その想い|東京児童協会

保育学生サークルを支援する、その想い|東京児童協会

学生が夏休みに入るなか、東京児童協会事務局で、とあるイベントが開かれました。
それは、九州・福岡市を発祥とする保育学生サークル『HOCARI』の、東京初開催となるキックオフイベント。仲間の輪を東京にも広げたいと、首都圏の保育学生を対象に交流会が行なわれました。

HOCARIは、保育学生や現役保育士が多数所属する日本最大級の保育サークルにして、NPO法人。保育業界の抱える課題の解消と、地域の子育て支援の充実に向け、学生や保育士への就職支援や、学生主体の子育てイベントの企画運営などを行なっています。

今回は、インスタグラムや先輩からの情報でイベント開催を知ったという、東京在住の学生たちが参加されました。

HOCARIの活動に賛同し、会場を提供した東京児童協会。その活動を以前から聞いていて、東京開催に当たり協力を申し出た同法人の菊地幹・事務局次長に、経緯と理由について取材しました。

保育業界が抱える深刻な問題!

待機児童問題がさかんに取り上げられていた頃、保育士不足が一因だと指摘されていたのですが、じつはいま、待機児童が減少しているにもかかわらず、それでも保育士が不足しているという現象が起きているんです。

理由の1つ目は、保育士の数に対して保育園が多すぎること、人員配置の要綱によるものです。
2000年に株式会社やNPOが認可保育園を設置できるよう規制緩和されたので、保育園の数が増えていきました。毎年誕生する新保育士をもってしても、増えすぎた保育園の保育士不足を埋めることができないんです。

また、保育園では現在通園している人数と定員のどちらか多い方に保育士配置するようにと東京都の要綱は示しています。これにより定員割れ等が起きている状態でも必要以上に保育士配置が必要になります。これが都の保育業界を取り巻く深刻な課題になっています。

2つ目が、保育士の早期離職率の高さです。
夢と現実とのギャップや、人間関係など、いくつか理由はありますが、学生と保育園とのミスマッチというのが離職の大きな原因になっていると考えられます。

3つ目が、そのことによって引き起こる、保育の質の低下。
人が足りていないと、必然的に一人ひとりへの負担が大きくなり、園児に対する細やかなケアができなくなってしまいます。一人の離職が、離職の連鎖を生んで、モチベーションの低下につながるケースもあります。

そして、保育の質の低下が進めば保育業界全体の地盤沈下を招いてしまうことを、私たちは危惧しています。しかも、それは遠い先の話ではなく、早晩、起こり得る事態だと思っているんです。
ですから、そうならないために、できることはやっていこうというのが、当法人のスタンスです。

未来の保育士をサポートする活動

これまでも、当法人独自に、保育士不足の解消、早期離職の改善に向けて、学生をサポートする活動を行なってきました。

その一例が、保育コースのある大学や専門学校など保育士養成校での出張授業。養成校の卒業生である保育士が、保育士の1日や、夢ややりがい、プライベートとの両立といった、保育士の現状についてお話をします。

保育士の仕事のすばらしさを伝えることで、できるだけ保育の道に進んでほしいという願いと共に、保育の世界をよりリアルに知ってもらうことで、離職の低下につなげたいという意図もあります。

しかし、いま行なっている活動だけでは不十分だと感じていたところに、話をいただいたのが、HOCARIのキックオフイベント。HOCARIの活動の輪が広がれば、保育を目指す学生同士、学生と保育士、保育園、保護者、子どもたちといった横のつながりができて、誰にとってもより良い関係性が構築できるのではないかと考えたんです。

全方向にwin-winな関係の構築に向けて

私は、HOCARIの広がりの先に、このような可能性を見ています。

たとえば、学生は、社会人としての基本的なルールを知らないままに卒業しますよね。相手の目を見て話すとか、遅刻や欠席をするときには必ず一報を入れるとか。当たり前のことだと思うかもしれませんが、逆にこうしたことができないと、社会人としての信用を一気に失ってしまいます。

こうしたルールを、ビジネスマナーとして堅苦しく教わるんじゃなくて、先輩保育士と後輩の学生といったフランクな関係性のなかで学ぶことができれば、学生も楽に社会でのスタートを切ることができます。

あるいは、保護者と子どもにも参加してもらう子育て支援イベントでは、学生はイベントを通じて、保護者が求めることを、肌で感じることができるでしょう。

また、保育園園長と学生が、気取らない雰囲気のなかで双方のことを知ることができれば、就職にあたって、学生と保育園とのミスマッチを防ぐことにも役立つと思います。

コミュニティーのなかで、迅速な情報交換もできますし、困ったことがあれば、アドバイスを求めることもできます。居場所を見つけ、楽しみを見出してもらえれば、保育士不足、離職の改善にもつながっていくのではと思っています。

実際に、今日の参加学生からも、「同じ保育学生でも学校によって得られる情報が違うから、情報交換ができてよかった」「BBQ会場で、保育園就職セミナーを開いてほしい」「適性があるのか不安だから、インターンシップに参加したい」「オンラインで全国の保育学生とつながりたい」などの感想をもらいました。

社会貢献のトップランナーでありたい

当法人は、船堀中央保育園の運営から始まり、現在都内に22の保育園・こども園を運営、来年には24にその数が増えますが、90年にわたり保育業界に関わってきました。

その90年の歴史のなかで、変わらずに受け継がれている想いがあります。
「社会福祉法人として、社会に貢献する組織である」ということです。そして、社会貢献において、トップランナーでありたいと願っています。

残念ながら、保育業界は、いまだに閉鎖的で風通しの悪い風土があります。同業者のなかには、新しい試みに対する忌避感を持たれる方も少なからずいます。
しかし、今後ますます目まぐるしく変化する社会情勢のなかで、そのニーズに応える自助努力を怠っている業界は、淘汰されていくことでしょう。

そうならないためにも、当法人が率先して、HOCARIの支援を含め、さまざまな試みを行なっていきたいと考えています。
保育業界のこれからを担う学生のサポートを柱にしつつ、保育士、子ども、保護者、保育園側、誰にとってもメリットのあるインフラづくりをし、社会貢献に寄与していく。その先に、保育業界の新しい未来が拓けるんだと思っています。