社会福祉法人 東京児童協会

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保育のプロとして信頼されるために「こども性暴力防止研修」を開催│東京児童協会

保育のプロとして信頼されるために「こども性暴力防止研修」を開催│東京児童協会

  東京都内に24の認可保育園と認定こども園を運営する社会福祉法人 東京児童協会では、2024年6月に成立、公布された「こども性暴力防止法」に伴い、東京児童協会で働く保育士に向け「こども性暴力防止研修」を開催しました。

東京児童協会で働くすべての職員は、日々、子どもたちと真摯に向き合い、心身ともに健やかに成長していくことを心から願っています。「こども性暴力防止研修」を通じ、より献身的に教育保育活動に励み、子どもたちが過ごす環境がより安心、安全になるよう、いま一度、認識を改め、実践していく機会にしようと考えています。

性別を超えて開催された大規模研修

東京児童協会ではこれまで、台東区立たいとうこども園の石田園長が男性の保育士向けの研修を実施してきました。

「これまで開催してきた男性の保育士に向けた研修では、女性と男性の保育士が抱っこする際の注目度の違いや服装や髪型によって保護者に与える印象などの意識を高めてもらうための話をしていました」(小川朝子先生

しかし、今回は、保育に関わるすべての職員にとって必要な情報であるという観点から全職員を対象にしました。これまで行っていた、男性の保育士に向けた研修内容も盛り込みながら、人権(不適切保育について)、LGBT、ハラスメント、性暴力等が発生した場合の対応についての研修となりました。

保育のプロとして意識する「平等と公平の違い」

「(自分自身で)疑われそうな行為にならないよう注意。(職員相互に)疑われそうな行為が周りにないか注意」という内容で、保育の現場で日常的に行る具体的例を挙げて、保育のプロとして意識すべきことについて研修を受けています。

★抱っこ

安心感と信頼関係を育むために必要不可欠な抱っこ。子どもが抱っこを求めてきたときは、基本的にその甘えを受け止め、受け入れることにより応答性が生まれる。同時に、「保育者として全ての子に平等に接しているか」ということを心がける必要がある。

子どもを抱っこした自身を客観的にみて、この子の親からはどう見えるか、抱っこされない子の親からどう見えるか、常に意識すること。

★触れ合い遊び

愛情と安心感を与え、自己肯定感の向上、脳や感覚の発達、言葉を介さないコミュ ニケーション効果、互いに愛情ホルモン分泌することによるリラックス効果がある。また、大人と子どもの信頼関係構築にも極めて有効的だが、保育者サイドからの一方的なスキンシップになっていないか、常に自分自身を振り返ることも大切。

★午眠

必要以上に体にさわらない。衣服がめくれたり下着が見えていることがないよう等の配慮が必要。

★プール・水遊び

プール活動を行う場所は、外部から見えにくいか、目隠しなど工夫した環境を作るなどの配慮をする。また、着替えやシャワーの際には、できるだけ複数の大人で関わるようにする。プールに入る前にシャワーで洗うことが必要な理由を子どもたちに丁寧に話す。

★おむつ交換と排泄援助

交換場所(トイレ)は目隠しを設け、子どもの人権に配慮する。誤解を受けるような行為(衣類䛾上から陰部をさわって確認する、オムツの中に手を入れて確認するなど)は行わない。所作に気を付け、必要以上に触らない。

グループワークでそれぞれの想いを共有

「研修中には、「普段から自分が心掛けている行動・考え方」「自分が足りていなかったと思う行動・考え方」「今後改善すべき行動・考え方」などについて、それぞれの考えを共有するグループワークの時間が持たれました」

普段、別の園で働く保育士たちや、男性の保育士として普段から意識していることなどを話しあえたことで、参加者たちからもポジティブな感想が出ていました。

「他園の男性の保育士たちと話をする事で、園での悩みや思いを共有することができてよかった。 園によって意識していることや行っていることが さまざまあり参考になった。 保護者との信頼関係を作る大切さや声掛けの大切さを 学ぶことができた」

「普段おこなっている保育を見返すと、「本当にそれは大丈夫だったのかな?」と考えさせられることが増えたなと感じました。保育者として抱っこをすることは必要不可欠ですが、時と場合によっては見え方が変わってくることもあるので気をつけないといけないと強く感じました。また、日々の保護者とのコミュニケーションの大切さを改めて感じました」

研修を終えて感じること

今回の研修について、小川朝子先生(台東区立たいとうこども園)と馬場与志子先生(かさい発みらい行きほいくえん)にお話しを聞きました。

小川先生:今回ほどの規模で「こども性暴力防止法」についての研修を行ったのは初めてです。内容としては男性の保育士に焦点をあてた性暴力の発生を未然に防ぐための研修として行いましたが、女性の職員からは、「男女関係なく受講したい」という意見が出ています。

馬場先生:参加した保育士たちからは、グループワークで普段から思っていることを話し合い、共感し、自分の行動を見直そうと思ったという声が出ていました。

小川先生:子どものためにと思ってやっていることが不適切と思われてしまうなど、研修の中でいろいろな気づきがあったようです。また、普段から対応に悩んでいたなどを話しあえたり、アドバイスがもらえたなど、本当に意味のある研修になったと思います。

馬場先生:この研修の目的は、子どもたちを性暴力から守るということももちろんですが、保育士たちを大事にしたいという想いがあります。夢を持って保育士になったのに、「ならなかったらよかった」と思わせるようなことがあってはならない。保育を志している以上、疑われない環境を作っていこうよということも参加者には伝えています。そのための研修だよと伝えています。

小川先生:この研修は、新入社員の研修のひとつにしても良いし、今回受けられなかった職員のためにも定期的に開催していきたいと思っています。効果を維持していくために、セルフチェックリストを作成し、研修参加者には数か月後に受けてもらう予定です。