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東京児童協会コラム
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夏休みの職業体験を開催。卒園児による‟小さな保育士”に園児たちも大喜び|忍岡こども園
東京都内に24の認可保育園と認定こども園を運営する社会福祉法人 東京児童協会では、卒園後も卒園児たちとの交流を積極的に行っています。今年は、忍岡こども園が、初の試みとなる、「卒園児による保育士体験」を実施しました。
この企画は、7月29日(月)~8月16日(金)の期間で開催。平日の9時から14時の間、参加希望をした卒園児たちが、小さな保育士として活躍します。
2017年に開園した忍岡こども園。今回は、小学1年生から3年生の卒園児を対象に参加を呼びかけ、約30名の子どもたちが、「小さな保育士体験」に参加する予定です。
目次
今日一日の予定を確認
この日参加するのは、1年生、2年生、3年生2名、計4人の卒園児です。
卒園後、初めて訪れた忍岡こども園。保護者の方に送られての登園ですが、今回は園児ではなく、“小さな保育士”として1日を園で過ごします。顔なじみの先生たちと挨拶をし、「おおきくなったねぇ」「今日は、がんばってね!」と声をかけられてうれしそう!
ところで、約3週間に渡り実施されるこの体験会、先生たちにとって負担が増すということはないのかという質問を園長先生にぶつけてみました。
「卒園した子どもたちとの再会の喜びがおおきいです。この取り組みをはじめる前に、全体の先生に周知したのは、『これは、卒園児交流ではなく保育士体験なんだ』ということ。子どもたちが、完全に自分で考えて、自分でしっかり判断ができる状況なので、先生たちの負担が増えるということはなくて、むしろ、毎日楽しいです。『今日は誰がくるんだろう』と(笑)」
“小さな保育士”体験に来る子どもたちを見ると、どの先生も名前で呼びかけます。卒園から何年も経っているのに、先生たちの記憶力がすごいです。
「生活の一部として同じ時間を共有してきた子どもたちのことを先生たちはそう簡単に忘れないです。そういう保育士さんたちの一面を表現する場ってあまりないんですよね」と語る園長先生。
今日1日を通じて、今まで知らなかった保育士という仕事についていろいろ知ることができそうです。
さて、子どもたちもは、今日のスケジュールの確認をして、それぞれの担当を割り振られます。そして、園児たちに名前がわかるように、名札も作成して“小さな保育士”の1日がスタートです!
朝の会から遊びの時間へ
3年生の二人は、3歳児クラスの担当。朝の会に参加し、自己紹介をします。
子どもたちは、“小さな保育士”先生の登場がとてもうれしそう! ちゃんと先生の名前を聞いて、ご挨拶をしています。
朝の会が終わると遊びの時間に。各々に教室内で好きなことをして遊ぶのですが、“小さな保育士”さんたちがクイズ遊びをしています。
3年生の二人は、子どもたちとの遊びがとっても上手!
クイズを聞いて答えたり、説明を聞いて笑ったり。とても楽しそうに過ごしています。
1年生の“小さな保育士”さんは、1歳児クラスの担当。
子どもたちの遊びに付き合い、優しく見守ります。卒園して半年も経っていないのに、すっかりお姉さんの表情ですね。
「赤ちゃんと遊ぶのが楽しみだった」という“小さな保育士”さんは、この後も1歳児クラスで大活躍していました。
水遊びタイムも大活躍!
この日も朝からとっても暑く、子どもたちはプールの時間を楽しみにしていました。
熱中症対策をしっかり行い、1歳児クラスから水遊びの時間に。“小さな保育士”さんも帽子をかぶり、子どもたちと水遊び。水をかけたり、ジョーロで遊んだり、1歳児クラスは水で遊んで涼みます。
3歳児クラスを担当する“小さな保育士”さんたちも、プールで泳ぐ子どもたちの補助に入ります。
バタ足でプールを一周する子どもたちが、より楽しく泳げるように輪っかを持って泳ぎを指導していました。
初めての体験!お昼寝の寝かしつけ
水遊びのあとは、11時30分から給食タイム。そして、1歳児クラスの子どもたちはお昼寝の時間に。
寝かしつけは初体験だという”小さな保育士”さん。ふたりに同時に優しくトントン。
きっと、自分が園児のときにしてもらったことを覚えているのでしょう。先生からの指示がなくても、自発的に子どもたちのそばに行き、寝かしつけをしていました。
3歳児を担当する“小さな保育士”さんたちも、寝かしつけに挑戦!
3歳児クラスは人数も多いので、寝かしつけは大変なのでは? と思いきや、こちらも上手に寝かしつけができていました。
あまりに子どもたちとの触れ合いが上手なので、下に兄弟がいるのか聞いてみると、「いない」とのこと。小さな保育士体験に参加するだけあって、子どもたちの面倒をみるのが好きな子たちばかりでした。
懐かしい味に舌鼓
寝かしつけを終えた“小さな保育士”さんたち。
待ちに待った給食時間です。東京児童協会の園の給食は、本当においしいと評判ですが、在園時には毎日食べていた給食を久しぶりに食べられるとあって、この時間を楽しみに“小さな保育士”体験に来る子も多いそうです。
この日の献立は、ひじき入りコロッケ、ほうれん草としめじのお浸し、厚揚げとえのきのみそ汁、スイカ、ごはん。
今日は、朝からたくさん働いたので、先生たちから、「おかわりしていいよ~」と言われて、コロッケやごはんをおかわりしている様子が微笑ましかったです。
食べ慣れた味であり、懐かしい味。
給食の時間は、“小さな保育士”さんの顔から無邪気な子どもの顔に戻っていました。
絵本の読み聞かせ・帰りの会
給食のあとは、帰りの会です。“小さな保育士”さんたちの絵本の読み聞かせがあり、その後、園児たちの「今日の振り返り発表」をおこないました。
子どもたちの発表をしっかり聞いてあげている先生たちの表情がとてもやさしいですね。
最後に、れんらく帳を子どもたちに配って、今日のお仕事は終わりです!
1日を振り返って保育士日誌を記入
全てのお仕事を終えた後は、今日1日を振り返りながら「保育士体験日誌」を記入します。
時間と仕事内容を書く欄には、細かく何をしたかを記入し、最後には、「きづいたこと、かんじたこと」を書く欄があります。
そこには、“小さな保育士”を体験したこで感じたことが率直な意見が書かれていました。
「保育士は思った3倍大変で、いがいとおもしろかった(でも、1日だからたのしかったんだよな)、こういうきかいがあったら、また来たいです」
「保育士が大変だということがわかった。はなぐみ、ほしぐみ、つきぐみがあいてをしてくれてうれしかった」
1日の体験を通じて、保育士の仕事の大変さと楽しさをしっかりと感じたようです。
日誌に書かれた感想以外にも、直接話を聞くと、
「最初は恥ずかしかったけど、トントンしたら寝てくれたのがすごくうれしかった」
「担当したクラスに妹や知ってる子がいたので、たのしかった。給食を久しぶりに食べたのもうれしかった」
という“小さな保育士”らしい感想も聞くことができました。
“小さな保育士”さんの日誌には、先生が今日のお仕事ぶりについての感想を記入します。
大好きな先生たちと一緒に働けたことも、子どもたちにとってすごく良い体験として心に残るでしょう。
帰りには、日誌、「小さな保育士認定証」、思い出の写真、名札を記念に持ち帰ることができます。
お迎えに来た保護者のみなさんも、そのおみやげをみてとてもうれしそうでした。
この体験が、子どもたちの将来に繋がることを願って
今回の「小さな保育士体験」を考えた理由のひとつに、保育士という仕事を知ってもらうきっかけを作りたいというのがあります。
全国的に保育士不足と言われる時代になっています。そんな中でも、毎年保育士としてお仕事をはじめられる先生もいるのですが、ある程度の人数が早期退職をしていきます。その理由はさまざまですが、そのひとつにミスマッチという理由があるんです。
実は、保育士という仕事の内容ってあまり知られていません。子どもが好きという理由で保育士になったけど、現場に入ってみたら想像していたのとは違う……と、ミスマッチを感じて辞めていくというケースは多々あります。
なので、「小さな保育士体験」を通じて、子どもたちに保育士という仕事について知ってもらえるのはとても貴重な機会だと思います。日誌に、「簡単だと思っていたら、大変だった」という感想があったんです。まさに、これを体感してもらえたということが、保育業界にとって大きな財産になるんじゃないかなと思っています。
子どもの成長や教育について考えると、意外と先のことしか見ていないんです。体の成長に関して言えば、大きくなったことを気にする人は少ないかもしれませんが、数年前の自分を振り返ることは、特に小学生の頃はあまりしないものです。
教育においても、基礎をしっかり築けば未来に目を向けがちです。そんな中で、自分が過ごした保育園での生活がどのようなものだったのかを、“小さな保育士”体験を通じて振り返ることができるというのは非常に重要な経験ではないかと思うのです。
当時は普通に使っていたいすやつくえが、今では小さく感じる。そういった視点から、子どもたちは守るべき弱者であるということを理解してほしいし、自分たちは子どもたちを守れる立場にあるということ、生命の尊さについても感じてもらえればと思います。
そして、小学生の発達段階において“小さな保育士”としてその記憶を再構築するというこの体験をした子どもたちの中から、未来の保育士さんになる子が出てくるというのも夢ではないんじゃないかなと思っています。
忍岡こども園としては、小さな保育士体験を長期休みの間に継続して開催し、ゆくゆくは、小学生にボランティアで小さな保育士さんをやってもらい、下校後の子どもたちの居場所作りの一環として継続していける方法も検討しています。