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「ダメ」の、その前に。園を越えて学ぶ「明日からできる運動あそび」|橋場そらとみどりの保育園

「ダメ」の、その前に。園を越えて学ぶ「明日からできる運動あそび」|橋場そらとみどりの保育園

運動が苦手な子に、どこまで声をかけたらいいのか。遊びの途中で集中が途切れてきた子に、どう関わればいいのか。

保育の現場には、運動の「やり方」を知っているだけでは答えの出ない問いがあります。跳び箱を跳べるようにすることと、子どもが「もう一回やりたい」と思えること。その二つをつなぐのは、保育者のどんな関わりなのでしょうか。

2026年9月25日、橋場そらとみどりの保育園 大きなおうちで、保育者向けのスキルアップセミナー「明日からできる運動あそび講座」を開催しました。講師を務めたのは、同園の園長で、柳沢式運動プログラム上級資格と幼児体育指導者検定1級の資格を持つ運動保育士の大竹龍先生です。

今回は、東京児童協会の職員だけでなく、法人外の保育者にも参加をひらきました。園で培ってきた実践を共有し、参加者自身も身体を動かしながら、それぞれの現場で使える方法を考える講座です。

そこで伝えられたのは、運動の技術だけではありません。「子どもに何をさせるか」から、「子どもがやってみたくなる環境をどうつくるか」へ。 保育者の視点を少し変える話がありました。

運動あそび講座でサーキットの環境を囲む参加者と大竹龍園長

「ちゃんとやろう」が増えたら、見直すのは子どもだけ?

活動中、十分に遊べていない、集中して遊んでいない子どもの姿が見られる。友だちにちょっかいを出す。けんかが始まる。そんなとき、大人はつい、子どもの行動を止めることに意識を向けがちです。

けれど大竹先生は、その姿を、遊びの難易度や環境を見直すきっかけとして捉えます。

難しすぎて、どう参加すればよいか分からなくなっているのかもしれない。反対に、簡単すぎて、もう面白さを感じられなくなっているのかもしれない。「集中していない」ように見える姿の奥に、別の理由が隠れている可能性があります。

そこで語られたのが、こんな言葉でした。

「大人の否定的な指示語が増える前に、定期的に大人が環境と遊びを調節することが必要」

子どもに同じ注意を繰り返す前に、今の遊びはその子に合っているかを定期的に見直す。難しさを変える、取り組みやすい形にする。大人の側にも、変えられることがあります。

これは、子どもが集中して遊べていない理由を一つに決めつける話ではありません。行動だけを見て判断せず、その背景にも目を向けるということです。

「どうしたら、ちゃんとやってくれるだろう」から、「どうしたら、やってみたくなるだろう」へ。問いが変わると、保育者が試せることも変わってきます。

「できるまで頑張る」より、「もう一回やりたい」をつくる

では、すでに運動に苦手意識を持っている子には、どう関わればよいのでしょうか。

大竹先生が繰り返し伝えたのは、「無理をさせない」ということでした。好きになってほしいからこそ、無理に取り組ませるのではなく、言葉や関わり方を変えてみる。

講座では、こんな声かけが紹介されました。

「昨日よりかっこよく跳べてたね」

見ているのは、ほかの子と比べてどこまでできるかではなく、その子自身の昨日からの変化です。まだ完成していない動きの中にも、前よりできたところはないか。大人がそこに気づき、言葉にして伝えます。

うまくいかないときも、「ダメ」「ちがう」と止めるだけではなく、「おしい!もう少し」と声をかける。できるまで同じことを続けさせるのではなく、できる形に変えて、もう一度誘う。

目指しているのは、できるようになることを諦めることではありません。子どもが自分から挑戦したくなる道筋をつくることです。

大切にしたい順番は、「たのしい → できた → もっと」。できた後に初めて楽しくなるのではなく、楽しいからやってみる。その経験の中に小さな「できた」が生まれ、次の挑戦につながっていく。それが、この講座で共有した運動あそびの考え方です。

聞いて分かったことを、身体で確かめる

こうした考え方を、実際の保育ではどう形にするのか。講座は、話を聞くだけでは終わりません。

大竹先生は自らを、研究や理論を保育現場で実践し、子どもの変化を見てきた「実践者」と位置づけています。理論を説明するだけでなく、目の前の子どもにどう伝え、どう支えるかまで扱うことを大切にしています。

講座は、柳沢式運動プログラムと幼児体育指導者検定、二つの資格の専門性に、現場の保育の視点を重ねた内容です。

例えば、前転の動きを伝える場面。まず見本を見てもらい、その後、参加者も一緒に“エアー”で姿勢や動きを確かめてから実践へ進みます。一度に「やってみて」と伝えるのではなく、動きを分け、理解しやすい段階をつくる。その伝え方を、保育者自身が体験しました。

跳び箱では、リスクマネジメントにもつながる補助の方法を、サーキットあそびでは、子どもの発達に合わせた調整や並び方、長く順番を待たせない環境づくりも扱いました。

どうすれば支えられるのか。どう並べば動きやすいのか。子どもに「行って、行って」と促す前に、配置や進め方で工夫できることはないか。日々の保育で直面する具体的な場面にまで、話が及びます。

腕で身体を支える「支持力」、床を蹴って跳ぶ「跳躍力」、鉄棒を引き寄せる「懸垂力」という3つの基本力も、用語を覚えるためではなく、遊びを組み立てる視点として紹介しました。

実践の提案は、まず1日10分のサーキットあそびから。クマ歩きやジャンプ、ぶら下がりなどを組み合わせ、続けながら子どもの変化を観察していきます。

講座では、子どもの運動に加えて、保育者自身の仕事のパフォーマンスを上げる運動や食習慣も、実践を交えて紹介しました。子どもを支える大人自身にとっても、運動と食事が大切であることを共有しました。

一度に保育のすべてを変えるのではなく、明日は声のかけ方を一つ変えてみる。遊びの難しさを少し調整してみる。子どもへの伝え方を、もう一段階に分けてみる

「明日からできる」とは、すぐに使える運動のメニューだけでなく、明日の子どもを見る目や、関わり方を持ち帰ることでもあります。

一つの園の実践を、ほかの園の「明日」へ

当日は、九十九里から参加した園長先生の姿もありました。所属する園や法人、地域の異なる保育者が、同じ場で学ぶ機会になりました。

保育の現場で積み重ねた工夫は、日常の中では当たり前になっていることもあります。しかし、ほかの園の保育者にとっては、悩んでいた場面を見直す手がかりになるかもしれません。

子どもへのひと言。遊びの難しさの調整。動きを伝える順番。一つひとつは小さな工夫でも、そこには、子どもの姿を見ながら試してきた経験が詰まっています。

大竹先生は講座の冒頭で、「インプットしたものをアウトプットする・発信する」ことの大切さを参加者に伝えていました。東京児童協会が今回の研修を外部にひらいたことも、その実践の一つです。

園で培った専門性を、法人の中だけで完結させない。ほかの現場で使える形にして伝え、参加した保育者が、それぞれの子どもに合わせて試してみる。そうして実践が広がっていくことに、開かれた研修の意味があると考えています。

講座の最後に大竹先生が伝えたのは、これからの保育者に向けたメッセージでした。少子化が進み、保育園や保育士が利用者から選ばれる時代になっていく。その中で、専門性を磨き、時代とともに自分自身を変化させ、成長させ続けることが大切だと語りました。

東京児童協会は、これからも現場の専門性をひらき、保育者が園や法人を越えて学び続けられる場をつくっていきたいと考えています。

「こんなとき、どうしたらいいのだろう」。日々の保育で感じるその問いが、学びの出発点です。

次回は、皆さんの現場の問いも持ち寄ってみませんか。一緒に考え、身体を動かし、それぞれの園の「明日からできる」を見つけていきましょう。

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